“振込め詐欺に御用心”
オレオレ詐欺に始まって、最近は還付金詐欺さらには給付金詐欺と、人々をだます手口は益々、多様化している昨今の社会情勢です。
さて、この振込め詐欺に遭遇した被害者の心理体験と我々アマチュア音楽演奏家の心理状態について、先日飲み会の席で指揮者の先生からおもしろい分析が示されたのでここに御紹介します。
なぜ人は振込め詐欺の危険性がここまで広報されても被害に遭ってしまうのか。それは犯人側から自分の心理的な弱みを見事にみすかされると(例えば本当に放蕩息子がいるとか)、それが引き金となり、犯人側からの不安心理のあおりに対し益々不安をつのらせ、最後には一刻も早くその不安から解消されて楽になりたいがために、周りの忠告や制止を振り切ってでも振込め詐欺の被害に走ってしまうということだそうです。
ところで、我々アマチュア、特にウィークエンド音楽演奏家にとって楽しいはずの音楽ですが、うまく演奏できない箇所に遭遇すると、成功体験がほとんど無いに等しいため常に脅迫観念に付きまとわれます。したがって、問題の箇所にくると体の筋肉は硬直し、頭の中身は真っ白というフリーズ状態に陥り、周りの世界や周りの音はおろか、冷静な時には視界に収まっていたはずの指揮棒すら目に入らなくなるのです。
いくら指揮者が水戸黄門の印籠のように「この葵の御紋が目に入らぬか」と眼前にタクトをふりかざしたところで、早く振込みを済ませて楽になりたい、そう思ったら最後で、指揮者の制止を振り切ってでも暴走を始めてしまうのです。その結末がどうなるか・・・・・・
本番の演奏を前にして考えたくもありませんが。
当たり前のことですが、私達弁護士の中で法廷における裁判官の訴訟指揮を無視して行動するおろかな人はおりません。しかしそのような弁護士でも、モーツアルトやハイドン作曲といった珠玉の名曲の難所にさしかかると、振込め詐欺の被害者のごとく不安心理が頭をもたげ、はからずも指揮棒の意図しない方向へ走り出し、合奏隊から告別せざるを得ないことがままあるのです。
自戒も含めて“振込め詐欺に御用心!!” |